骨粗鬆症の予防:臨床像と骨折

 

 骨粗鬆症の予防は,栄養と運動が中心である.ビタミンDの摂取状態は血清25(OH)Dの測定で判定できる.最近,高齢者におけるビタミンD必要量は,従来の基準よりもっと多いとの指摘が世界的に増加し,米国とカナダでは70歳以上でのビタミンDの所要量が600単位から800単位に引き上げられた カルシウムはなるべく食品から摂取することが望まれる.ビタミンBe, B。,葉酸などは骨質の維持に必要である.運動習慣は骨密度の維持,転倒防止のためにも重要である.骨密度上昇には筋力増強,ストレッチング,エアロビクスなどの耐久運動が有効であるが,歩行,ランニングなどの身体活動でも骨密度は増加できる.太極拳,開眼片脚起立訓練などのバランス改善運動も有効である.

 骨粗鬆症の臨床像,診断および治療の開始

1.臨床像と骨折

 骨粗程症では,骨折後の急性疼痛,機能障害(寝たきり)などのほかに,慢性的な脊柱変形,姿勢異常,胸腹部臓器の圧迫による逆流性食道炎などの消化器症状や心肺機能の低下,変形に伴う疼痛など,さまざまな症状がみられる.

 骨粗鬆症の骨折は,脆弱性骨折という名称が広く用いられてきたが,日常診療ではその判定に迷うことも多く,世界的には従来の脆弱性骨折という用語の使用は避ける傾向がある.最近,WHOでは脆弱性骨折のもっ臨床的意義に着目し,①疫学的に骨密度低下とともに発生リスクが増加し,②次の骨折のリスクを増加させる骨折を,骨粗鬆症性骨折と呼び,日常診療における骨折リスク増加判定に利用しようという提案をしている.この2つの条件に合致する骨折は,部位と年齢に依存し,わが国のデータでは,50歳以上での椎体,大腿骨近位部,前腕骨(橈・尺骨)遠位部,上腕骨近位部,骨盤,下腿,肋骨の7部位の骨折が,これらの条件に合致する.このような状況から,今回のガイドラインでは,骨粗程症の臨床では,50歳以後で発生するこれら7部位の骨折を重視する立場をとっている.

2.診断手順と鑑別診断

 骨粗程症の診断プロセスでは,早期から続発性骨粗転症の可能性を念頭において鑑別診断を進めていくことが重要である.また,骨粗程症の背景には,糖尿病,慢性腎臓病(CKD),関節リウマチ,副甲状腺機能亢進症甲状腺疾患などとともに骨粗程症を併存しやすい疾患として脂質異常症,高血圧症,動脈硬化症などがある.骨粗程症の診断にあっては,これらの生活習慣病が併存しやすいことに留意する.医療面接では,骨粗程症を続発する疾患および骨粗程症を併存しやすい疾患の有無とともにWHOの疫学的研究とメタ解析により明らかにされてきた骨折危険因子を聴取することが重要である.また, 2011年版のガイドラインでは,身体所見に関して身長測定による姿勢異常の観察法と身長低下による椎体骨折のリスクが明示され,日常診療に利用しやすくなっている.

 dual - energy x-ray absorptiometry (DχA)による骨密度測定では,腰椎と大腿骨近位部の両者を測定することが望ましく,診断にはYAM %で低いほうを用いる.また,大腿骨近位部ではtotal hip と頸部の2ヵ所のうちで低いほうを採用する.骨密度測定には,橈骨遠位部DXA,中手骨MD法も使用できるが,感度が低い.超音波による測定は診断には使用しない.骨粗霧症診断ではエックス線像による骨粗俗症化の有無とともに骨密度が正常範囲内(T値>-1, YAM >80%)であるか否かをみて,正常範囲より低い場合には骨折危険性増加の可能性を念頭におく.骨密度低下と脆弱性骨折(上記の7部位の骨折)の既往があれば骨粗鬆症と診断し,骨折がなければ骨密度の値により,骨粗程症