論文の構成例

 

 ここで、論文の一例を考えておきたいと思います。一般的な形式と内容を例示するために、英語学習のためのCAIシステムの開発をする、ごく簡単な卒業論文を書くことを仮定し、そのアウトラインと、要約、序論、結論の部分に、どんなことを書けばよいかを考えてみます(とはいっても、一分野を対象にした記述になりますので、読みづらければ、本節は飛ばし読みしてしまっても結構です。なお、この論文は横書きにすべきものです)。

 CAIというのは、Computer Assisted Instructionの略語で、何かの学習を計算機を利用して行うことを意味します。ここでは、論文は、標題からわかるように、英語を学ぶためのシステムの作成について書いたものとし、具体的に次のことを想定します。

 著者は、中学生が利用する英語学習のCAIシステムをつくったとします。システムは

1 英文を生成する。

2 生成した英文から問題をつくり、画面を通し生徒に与える。

3 生徒は画面の問題にキーボードを使って解答を与える。

4 システムは解答を評価し、生徒個人の達成度を記録する。

という四つの段階を繰り返すと想定しましょう。

 従来のCAIシステムは、計算機が問題そのものとその答えを全部記憶し、それを単元別、難易度別に学習させていた(とします)。この欠点は、問題と答えが常に固定されていることにあり、ここでは、生徒が問題と答えを覚えてしまうと、学習効果が薄れる点にあります。

 このようなシステムの欠点を回避するには、文を自動的に生成し、それから問題をつくるようにすればよいと考えられます。しかし、文法的にも、意味的にも整合性のある文を機械的に生成することは困難です。たとえば、

この論文でのシステムは、文を自動的に生成するメカニズムをもっているとします。著者は、文の生成をパターンによって行います。実際の論文を書こうとすれば、これをどう行うかが問題となると思いますが、ここではそれは不問にします。ただ、パターンを使っての文の生成は、理論的な。美しさ”を欠くが、実用的な見地からすると、文法的にも、意味的にも整合性のある文をつくり出す能力がある点て他の生成法より優れていると考えておきます。

 次に、システムは、生成された文から、四種類の問題をつくるとします。それらは、文の文法的書換え(たとえば、現在形の文を完了形にする)、正しい英単語の選択、日本語の意味(単語の英訳)、単語の並び換えであるとしましょう。

 論文がこのようなものであるとすると、そのアウトラインの一例は、たとえば、下に示すようなものとなります。

1.序論(はじめに)
 1.1 CAIシステムの方向
 1.2 融通性のあるドリル学習
2.文の生成
 2.1 文生成の諸問題
 2.2 パターンによる文の生成
  2. 2. 1 文の基本パターン
  2. 2.2 名詞句のパターン
  2. 2.3 辞書の構造
 2.3 生成過程と実例
3.問題の作成
 3.1 問題の種類
 3.2 作成の過程
 3.3 学習の実例
4.実現と評価
 4.1 現在の状況
 4.2 性能の評価
5.結論(おわりに)


 技術系の論文では、アウトラインは筋書きというより章立てとなるのが通例です(章立ての細目や見出し用語が、実際に論文を書いているときに変わっていき、それに従って、何を

 この論文には、本文の前に要約をつけることにします。要約は、すでに述べたように、論文の要点を手短に記述するものですが、情報過多の今日の読者には、ますます大事なものとなってきており、社会科学系の論文にもこれをつけるものが増えてきています。読者の多くは、ここに目を通し、論文の中身を読むべきかとうかを判断します。

 上の論文の要約の一例として、たとえば、次のような文章が考えられます。

 

◇本稿では、第二の言語、英語を学ぶためのCAIシステム (ELS)の開発について述べる。ELSは、文の生成にはじまり、生成された文をもとに、単語の英訳、単語の並び換え、文法的変換、単語選択の四種類の問題を作成し、英語を学び始める中学生にドリルによる英語学習を提供する。

 このシステムの中心は文生成のメカニズムにある。ELSは、形式文法による文生成の弱点を回避するため、文のパターンと辞書を利用した文生成を行う。それにより、文法的、意味的に整合性、一貫性のある文、実用的な文の生成を可能にし、ドリル学習に常に新しい問題を提供している。

 ELSは、現在、ある私立中学校で実験的に使用中である。その結果、生成できる文の種類と問題の範囲が限定されていることを除けば、教員、生徒から、システムの使いやすさや有用性に高い評価を得ることができた。