色素性母斑、母斑細胞母斑

 

色素性母斑nevus pigmentosusまたは母斑細胞母斑nevus nevocellularis、 nevus cell nevus、 nevocytic nevus、 Navuszellnavus

 〔症状〕褐色から黒色までの大小の色素斑で、扁平または隆起する.

 1)黒子[ほくろ]lentigo : 帽針頭大から小豆大までの比較的小さいもので、褐~黒褐色を呈し、円形~不正形で皮面と同高のものと、弧状~半球状に隆起して黒褐~黒色の丘疹状のものとがある.後者にはしばしば有毛性.出生時存せず、3~4歳頃より生じて次第に増える.

 2)比較的大きいもの:多くは出生時よりあり〔くろあざ〕、種々の大きさ・形を示し、多少隆起する.黒褐~黒色で軟らかい.剛毛を有することあり〔有毛性色素性母斑(n.p. piliferus)〕、巨大で獣皮を想わすものを巨大色素性母斑(n. p. giganticus)〔獣皮様母斑(Tierfellnavus)、海水着型母斑(bathing trunk nevus)、衣服型母斑(garment type nevus)〕といい、出生時すでに存在し、悪性黒色腫を生ずる頻度が高い.

 表面が現状・乳頭腫状のものをそれぞれ現状・乳頭状色素性母斑(n.p.verrucosus/papillomatosus)、淡褐色斑上に黒色小斑が多数集まっているのを点状集簇性母斑〔エクリンまたは毛包中心性母斑(eccrine-or follicle-centered nevus)]、脳回転状皮膚を呈するものを大脳状母斑(n. cerebriformis)、上下険に存在するものを分離母斑〔divided nevus:1個の母斑が胎生期の眼裂の癒合している時期に(胎生9~15週)に形成され、その後眼瞼開裂により上下に2分されたもの.全眼瞼を侵すもの、内または外眼角で連続するもの、完全に上下に分かれるものなど.まれに陰茎冠状溝部にも生ずる]、周囲に白暈を有するものをサットン母斑(Sutton's halo nevus)、爪母に存在し爪甲に線状色素沈着を生ずるものを爪甲線条母斑(n. striatus unguis)という.

 [病因]神経櫛(neural crest)由来の異常分化細胞で、メラノサイトからシュワン細胞までの広いスペクトルを示す.巨大色素|生母斑の一部を除き、遺伝はない.

 〔組織所見〕本症の条件は、①良性の、表皮から真皮深層まで広がった細胞集団、②形態と配列は表皮から真皮深層まで段階的な移行を示し、③メラニン量は上層ほど多く、下に行くほど少なくなり遂に消失する.個々の病巣はこのうちいずれかの要素を多く持ち、それにより次のように分類される〔Traub-Keil〕.

 1)境界母斑junction (or borderline) nevus : 母斑細胞が表皮真皮境界部に限局しているもの口型〕.

 2)複合母斑compound nevus : 母斑細胞が境界部と真皮とにあるもの.すなわち

1 )、 3)の両要素を有する〔JD型〕.

 3)真皮母斑intradermal nevus : 母斑細胞巣が真皮にのみあるもの〔D型〕.

 1)→3)といくほど変化が深部に移動して  cいる.年齢的にもこのような変化を示す.

 3)c型〔神経線維腫構造structure neurofibromateuse〕:さらにその下層に、胞体も核も紡錘形の母斑細胞が束状、索状に配列し神経線維腫様にみえ、メラニンを欠く.まれにC型のみから成るものがあり、これをC型母斑と呼ぶ.老人にみられる淡褐色柔軟な、いわゆる老人性神経線維腫はこのC型母斑に相当する.

 J 、 D、 a、 b 、 cを、その要素の多寡により大文字・小文字で書き、 AbjDのように表すと、その母斑巣の大体の構造が示される.加齢とともに亅A要素が減じ、DB~DC要素が増し、特に黒子では臨床的に色が薄くなり、かつ隆起して来る.

 部分脂肪腫性母斑n. nevocellularis partim lipomatodes : 母斑細胞集塊と脂胞細胞と混在するもの.古い母斑細胞の脂肪変性、母斑細胞と脂肪腫との合併の2説がある.

   気球細胞母斑balloon cell nevus :真皮ないし複合母斑において、大型泡沫状母斑細胞〔φ20-40μm〕が大部分を占めるもの.正常母斑細胞の10倍にも達し、原形質は令胞状~顆粒状で、ときにメラニン顆粒を含む.電顕的に多数の小胞あり.メラノッーム形成によると考えられる.

 〔治療〕①冷凍療法〔雪状炭酸・液体窒素〕:2~5秒圧抵、2~3週毎.②山飢凝固法:主として黒子.③切除、植皮、④皮膚削り術、⑤化粧品:カバーマーク、スポットカバー.

 治療上重要なことは、確実に悪性黒色腫と鑑別すること.