現行健診体制の問題

 

 現行の乳幼児健診とその後の療育援護システムをみると、まず実施主体は、国が主導するもの、県あるいは市町村によるものと分かれており、関連する機関も保健所、各種医療機関、専門施設、保育所、幼稚園、学校その他にわたり、職種は保健婦、医師、看護婦、心理専門職、ケースワーカー、その他パラメディカルスタッフ等、さまざまな人々が関与している。したがってまずこれら相互の連携や情報の一括管理、対応の一貫性が保たれているかどうかが大きな問題となる。現在共通に指摘されているいくつかの問題点もほとんど上述の点と関連している。

 乳幼児健診システムにおける問題はいわゆる「健診もれ」「発見もれ」「対応もれ」である。まず「健診もれ」としては、現在の制度のもとでは少なくとも数%、多くの地域では2~4割の未受診兒が存在する。このなかにはリスク児や障害児の存在する可能性が高い。リスク児や障害児はすでに医療機関にかかっていることが多く、あらためで健康診査を受けようとはしないという傾向があるからである。第2の「発見もれ」は、スクリーニングレベルがさまざまであることに起因する。現在スクリーニングのための統一基準があるわけでなく、また経験の少ない人がスクリーニングにあたらざるをえないなど人材養成の問題もある。さらに健診の実施主体がいろいろであることもスクリーニングの統一性、一貫性を保つことを困難なものにしている。多くの自治体では医師会委託による健診を実施しているが、この場合スクリーニングレベルの統一は不可能に近い。したがって発見もれを生じないための相互の情報交換、研修が必須である。第3の「対応もれ」は、実施主体がさまざまであるために相互の連携、情報交換が不十分であることから生ずる場合や、さらには必要な社会資源が十分に整備されていないということによって生ずる場合がある。これらは対応の一貫性や発見後の的確な追跡管理を欠くという原因になりやすい。

 これらの問題をいかに克服するかというところから大津市や逗子市などのとりくみは出発している。その他、この問題(特に「対応もれ」を中心に)の解決をめざして、いくつかの県や主要都市では近年障害者福祉センターや総合療育センター、小児保健センターなどが設立されてきている。この点について村川(1983年)は、「従来各識者によって指摘されている衛生医療行政と福祉行政という区分について、より統合された視点からのリハビリテーション行政の確立とサービス供給体制作りが21世紀に向けた現実的課題として日程にのぼりつつあると考えられる」と指摘している。さらに同氏は、わが国の障害乳幼児療育のための問題の展開や解決が単一機関(機能)の枠組のなかにとどめられていたり、行政区分や基礎的方法としての学問区分(医学、心理学、教育学、社会福祉etc。)の枠組のなかで論議されていることにふれて、今後たてわり行政をこえる総合福祉政策の展開と合わせて、乳幼児リハビリテーションのための学際的共同事業が重要な意義をもつと述べている。