発達障害の早期発見、早期対応のためのシステム

 

  その基本構成

 発達障害にたいする早期発見、早期対応の目標は、第1に障害の発生を予防すること、第2に障害像が明確となり、固定化する前に発見すること、第3に早期療育により障害の軽減をはかるとともに2次障害の発生を予防すること、にある。これらの目標を実現するためにはそれぞれに対応する組織、制度が必要である。加藤(1983年)は上述の観点から早期発見、早期療育のためのシステムを三つのユニットに分けてとらえている。ユニットIは先天異常、心身障害の予防、予知を課題としており、妊娠期=妊婦を対象とする。ユニットnは先天異常の発見、診断が課題で出生児を対象としている。ユニットⅢは児を含む家族全体を対象としており、障害児にたいする治療・教育・リハビリテーションとそれを包含する家庭生活援護が課題となる。

 これらのシステム、あるいはユニットを実現するうえで重要な点は、障害をもつ児童を小児専門医療機関で発見し、ヶアするという、いわば特定化されたピンセットでつまみ上げるようなやり方ではなく、ハイリスク児*を含む児童全般の発達と健康を管理するシステムのなかで、マススクリーニング¨的手法をとりながらも小児保健学や発達神経学、発達心理学などの科学的成果に裏づけられた系統的で総合的な発達一健康評価を求めるというものでなければならない(村川、 1983年)。現在、これらの事業を実現すべき基幹となる行政は母子保健行政であるが、母子保健の目的をすべての子どもの健全育成という一般的なものから、「先天異常と心身障害へのアプローチ、すなわち障害の早期発見と早期療育」に明確化する(松井、朝倉、 1983年)ことが重要である。そのことによって今一つの基幹行政たる児童福祉および障害児福祉行政との連携もより緊密なものとなる。加藤(1983年)は母子保健の目的の明確化をふまえて、先のシステムが具備すべき特性として四つを指摘している。第1は機会均等性で、すべての異常を抽出するためには、すべての妊婦と子どもがいちどはスクリーナーの目の前を通らなければならないということ。第2は臨地性で、スクリーニングは一度で完結するものではなく、ハイリスクであろうと予測したものを抽出し、その経過を追いつつ予防的な、また確定診断に伴う治療、リハビリテーションにつなげていかなくてはならない。したがって対象の居住地に隣接した形での追跡管理とケアが必要となる。第3には総合性で、妊婦、ハイリスク児ともに医療的対応から教育的・福祉的援護までの枠組全般の整備が必要である。第4にスクリーニングの精度、治療、リハビリテーションの内容、方法、さらに教育、福祉などの援護資源のネットワーク整備や適正配置を支える科学性が維持されなくてはならない。ハイリスクをひろいあげ、追跡するなかで確定診断するという、いわば経過観察を重視している点(ユニットnはtype A)である。そのなかで結果的にほぼ100%に近い把握率を実現している。これを可能にしているのがユニットIの存在で、ハイリスク妊娠による出生はハイリスク児として当然胤点的に追跡している。逗子市で採用しているハイリスク妊娠およびハイリスク児の基準を示す。後方援護システムは人口5万人の自治体としては充実しており、保健婦による家庭訪問活動、両親指導をも含む構神薄弱児生活訓練会の実施、ボーダーラインの子のための親子教室、療育担当者会議や親の会との連携などがはかられている。

 上記両市は早期発見、療育にかんする施策が最も進んだ、ある意味でモデルケースといえるものである。厚生省の心身障害特定研究である乳幼児健康診査の研究の中心となってきた中山(1980年)は、神経学的発達や各診療科における疾病の発見と早期対応の必要性から、乳児期4回、幼児期3回の健診を提案している。大津市の健診システムはほぼこれに近いものとなっている。しかし、すでに述べたように多くの地域では乳児期2~3回、幼児期2回となっており、地域差も大きく、その他さまざまな問題をかかえでいる。以下現行の乳幼児健診制度における問題点をみてみたい。