知的発達障害の医学的診断

 

 知的発達障害の医学的診断の目的は、次のような三点にある。

 第一の目的は、知的発達障害があるか否かを明らかにすることである。これはもちろん医学的診断だけでなく、心理的発達診断なども含めて子どもを総合的に診断する必要がある。

 第二の目的は、障害の医学的問題(臨床像)を明らかにするとともに治療指針をひきだすことである。知的発達障害をもつ子どもは次に示すようなさまざまな形態的・機能的な障害を合併していることが多い。

 循環器系:先天性心臓疾患など

 消化器系:食道、胃、腸の奇形など

 泌尿器系:腎臓奇形、尿道下裂など

 生殖器系:停留睾丸、半陰陽など

 皮膚:掌紋の異常、発毛の異常、色素沈着、色素脱失、魚鱗癬など

 口腔:口蓋裂、舌小帯短縮、過剰歯など

 目:小眼球、眼瞼下垂、斜視、眼球振盪など

 耳鼻:耳介の奇形、外耳道閉鎖、鼻の奇形など


 骨格系:多指、合指、くも指、骨の欠損など

 神経系:てんかん

 その他:異常行動などの精神病的症状

 以上のようなさまざまな異常を正確に診断し、必要に応じ手術等の医療の方針をたてることが重要である。従来ともすると知的発達障害児はこのような合併症状については軽視されてきたようだが、むしろ最高レベルの医療を駆使して治療すべきであろう。

 医学的診断の第三の目的は、知的発達障害の原因を究明することである。原因を明らかにすることは、その原因をとりのぞき障害を予防することを可能にするとともに、原因そのものへの治療方法の解明へと進めることができる。近年、障害児の発生が減少しているといわれている。有馬(1984年)によれば、脳性マビは1960年当時より30~50%に減少している。こ
れは原因にたいする対策-たとえば、新生児黄疸の対策、未熟児の減少、経皮的な酸素濃度の管理などによる無酸素l生脳症時の管理等の周生期医療の改善一に基づく減少であると考えられる。また高年齢出産の減少はダウン症候群の減少を可能にし、近親婚率の低下等は常染色体劣性遺伝疾患の減少を可能にした。さらに障害を未然に防ぐことができるようになったものに先天性代謝異常症がある。現在では先天性代謝異常マススクリーニングは、出生児の97%に実施されており、フエニールケトン尿症、メイプルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ヒスチジン血症、ガラクトース血症などが早期発見・早期治療の対象となっており、障害の予防を可能にしている。

 知的発達障害の原因と現在の障害の状態を診断するためには、主に次のような検査が行なわれている。

 1。病歴聴取

 2。一般身体観察

    身長、体重、頭囲などの身体計測や眼、口腔、顔貌、耳、鼻、脊柱、

    四肢、胸腹部、泌尿生殖器、皮膚、姿勢などの観察

 3。臨床的検査

    小児科的一般検査、CT検査、脳波検査、手根骨レ線、染色体検査、

    その他の検査