行動のECによる改変

ローゼンツヴァイク以前の動物心理学者が、脳を「暗箱」として触れずにきたことは前述のとおりだが、探索行動や各種の学習行動にかんする知見は、今日わたしたちがECと呼んでいる環境条件下で飼育することにより、学習行動が促進されることを示していた(たとえば、Hebb門下のフォーゲイス:Forgays夫妻〈1952年〉、フォーカス:F orgusく1954年〉らの報告)。そのベースには、多分、上述してきた各種の脳の変化があったのであろう。

 オープン・フィールド・テストでは、ICの方がECより活動性(通過区画数)が高い。脱糞数はICの方が多いが、統計的有意レベルには達しないという報告がある。 Hebb-Williams迷路テストは、1から12までの迷路課題があり、袋小路に入りこんだエラーの数を指標とする。ECではエラーが減り、学習の促進がみられる。課題により難易はあるが、一般にEC(▽-▽)でエラーが減り、 ic (△-一一-△)で増えること、SCにー○)がECとICの中間の位置にあることがみられる。 カナダのMcGill大学で育てられた迷路学習の優系統と劣系統で、 EC ・ ICの影響をみた成績は面白い。型のごとく離乳から開始し、40日間のEC・SC・IC飼育ののちHebb-Williams迷路テストをした。優系統ではSCとECのエラー数が変わらず(EC効果なし)、 IC効果でエラーが増えている。逆に、劣系統ではSCとICのエラー数が変わらず(IC効果なし)、 EC効果でエラーが減っている。

 T迷路の弁別学習テスト(正しくない側に進むと床から電撃をうける)でも、ECで分化の促進がみられ、反転学習(正しい側を左右逆にする)における学習も促進される。明暗弁別の能動的回避学習では軽度のEC効果しかみられないが、受動的回避学習ではEC効果がはっきり出るという報告がある。ただし、これは300日齡から始めて、 360日間EC、 SCで飼育した老人学のモデル実験としての研究である。

 IC群に比べてECでは睡眠時間が増加し、内容的には徐波睡眠・逆説睡眠ともに増える。ECで学習能力が向上すること、マウスで学習能力と逆説睡眠量のあいだに正の相関があること、重度の精神遅滞児でレム(逆説)睡眠が減ることなどから、ECでは逆説睡眠が増えるのではないかとわたしたちは考えた。睡眠のEC ・ IC 差は報告されたが、すでに述べたように、これだけではEC効果か、IC効果かわからない。SCを対照群に加えておこなった実験の結果。これで従来の報告がEC効果であることが確認され、ICでは睡眠の減ることがわかった。