末梢血幹細胞移植の実際と成績

 

 採取した幹細胞を、実際にどのように移植するかという点についてお話いたします。

 

 まず、移植前には全身放射線照射は使いません。われわれが子どもに対して治療するからには、その子どものそれから一〇年、二〇年後の人生にどれだけわれわれが責任を持つのか、覚悟を決めてかからなければならないわけですから、われわれは一切、全身放射線照射を使わずにやっております。そうして、幹細胞を入れて一週間ぐらいたちますと、白血球や顆粒球がどんどん増えてまいります。

 

 このように、血液の回復が速いため、われわれは無菌室というものを使いません。例えば移植から数日目のような白血球がまったくない時でも、小さい子どもの場合はお母さんが同じベッドに寝ます。もちろん無菌食というものも出しません。「店屋物を食べたい」という時は、ちゃんと出してあげます。ですから医師も病室に入るのに、ガウンとかマスクをしません。ただ、手洗いだけは十分にしてもらっています。

 

 もちろん、無菌操作を行えば、感染症の頻度も少しだけ少なくなると思います。でも、われわれは、こういうやり方をすることによって、「無菌ベッドがないから移植ができない」というようなことをなくすようにしているわけです。やはり良い治療というのは、ある程度普遍性がないといけない、というのがわれわれの考えです。

 

 末梢血幹細胞移植の成績

 

  「骨髄移植を行うしか治る術のない難治性の白血病」という言葉を良く耳にします。そういうふうに思っている方も大勢おります。でも、ちがうことも多いのです。例えば、化学療法を始めて一年半以内に再発した場合は、普通の化学療法をもう一回やっても治らないといわれています。それは正しい。同種骨髄移植をやるしか治す術はない。それも今までは正しい。

 

 しかし、せめてドナーのいない方は、ドナーが出てくるまでに末梢血幹細胞移植をやったらどういう具合になるだろうか、というのがわれわれのやってきた研究です。

 

 小児の急性リンパ性白血病に対する末梢血幹細胞移植の治療成績は、第二寛解期の移植で七〇 パーセントぐらいで、第三・第四寛解期では三〇パーセント前後と、まあ一応良いといえると思います。良いといってもまだ数が少ないものですから、これからいろいろと問題が起こってきたとしても、少なくとも同種骨髄移植と同じくらいの治療成績になるのではないかと思います。

 

 末梢血幹細胞移植は、いまだ不明の点も多い治療法と思います。そのため、ある程度進めて行ってみないと、本当に効果があるかどうかを判定することは難しいかも知れません。ただ、この移植術のいちばん良い点というのは、今までの移植よりも副作用が少なくてすむという点です。ですから、同種骨髄移植にいこうかどうかを迷っているときに、あるいはドナーが見つからない場合には、迷うことなく行う価値のある治療法と考えています。