急性骨髄性白血病のベストの化学療法

 

 化学療法の成績が現在日進月歩のため、もっとも決断に苦慮する疾患といえます。第一寛解期の骨髄移植による生存率は、全体として七〇パーセントと良好です。第二寛解期以降は当然移植の対象になりますが、第二寛解期の移植でも六〇パーセント近いところまでの生存率が得られています。ただし再発後、全員が第二寛解にまで持ち込めるわけではありませんので、すべての再発患者に移植が可能というわけではありません。

 

 この病気では、すべての第一寛解期に移植をすべきかどうかは、特に小児では問題になる点です。急性骨髄性白血病はMOからM7までに分類されますが、M一・M2とM4・M5という二つのタイプが大多数を占めます。MO、M6、M7などは、予後不良のM4・M5に準ずると考えてよいと思います。

 

 この二つのタイプについて、骨髄移植をやるか、化学療法をやるか、小児のベストの化学療法と比較してシミュレーションをしてみました。

 

 まずM一・M2の場合、この病気は小児ではベストの化学療法で六〇~六五パーセントが治る可能性がでてきました。同種骨髄移植の成績も骨髄性全体で七〇パーセントですから、M一・M2は最大八〇パーセントの期待ができます。仮に総数一〇〇人のM一・M2の患者さんのうち九○人は寛解に導入できて、第一寛解期の骨髄移植をします。準備期間に数名再発し、大多数は血縁者、非血縁者からドナーを見つけて移植をします。八〇~八五人の患者が骨髄移植を受けた場合の生存率が八〇パーセントですから、六四~六八人が移植後生存することになります。

 

 このように、化学療法で六五パーセントの生存率に対し、第一寛解期の骨髄移植で八〇パーセントもの成功率なら骨髄移植がいいように思いますが、ここに統計のマジックがあります。この八〇パーセントという成績は、決して総数一〇〇人の八〇パーセントではなくて、化学療法で移植できる状態に持ってきた患者の八〇パーセントです。すべての患者さんは、まず化学療法で完全寛解になり、二、三回の地固め療法を三ヶ月~九ヶ月にわたって行ったのちに骨髄移植を受けるはずですから、この時期以後の化学療法の治癒率と比較する必要があります。スタート時点での一〇〇人中六五人が長期生存するのであれば、半年まで寛解か続いたM一・M2の患者さんのその後の長期生存率は七五パーセントに上昇するはずです。したがって、この時点で行う骨髄移植の成績とほとんど遜色のない数字です。治療方法の比較は、このように決して単純ではないことを、念頭においていただきたいと思います。

 

 これは、あくまで小児の場合の話です。成人は、化学療法の成績が小児よりかなり悪いので、第一寛解期の骨髄移植の対象患者はさらに拡大されることになります。

 

 M4・M5の場合は、化学療法の成績が悪く、化学療法だけで治る小児の患者さんが最大四〇パーセントです。寛解導入がひじょうに難しくて、二〇パーセントの患者さんは失敗し、また導入後も約四〇パーセントが再発し、最終的には一〇〇人中四〇人しか生存の見込みはありません。

 

 寛解導入できたあとの八〇人の患者が移植を受けるまでの平均六ヶ月では、さらに再発などで脱落し、六五~七〇人になっているとすると、その後の生存率は六五~七〇人中四〇人で、化学療法のみの生存率は六〇パーセントに上昇します。骨髄移植もその段階で行ってM4・M5が六〇~七〇パーセントという成績ならば、その差は一〇パーセント以下しかありません。