高齢者に「自家末梢血幹細胞移植」

 

●骨髄移植ができない人に

 

 唯一の根治療法とされる骨髄移植にはHLA(白血球の型)が合致するドナーが必要だ。

 

 こうした骨髄移植の欠点と無縁なのが「自家末梢血幹細胞移植」だ。自分の血液から幹細胞を採取するのでドナーは不要だし、拒否反応を起こす心配がなく、高齢者も適応になる。

 

 積極的に自家末梢血幹細胞移植に取り組んでいる京都第一赤十字病院血液内科の藤井浩部長は、

 

 「この方法は、だれにでもOKというわけではありません。採取する幹細胞は正常でなければならず、『採取時に寛解状態であること』が大前提。つまり、事前の化学療法が成功していなければ、この治療はできません。寛解になっても、十分な数の幹細胞が採れないこともあります」

 

 と言う。

 

 ほかにも問題がある。寛解か条件とはいえ、もともと病気の人の幹細胞だから、異常な細胞が混入する危険はぬぐいきれない。また、移植した幹細胞が「自己」なので、体内の白血病細胞に対しても攻撃を加えない、などだ。

 

 骨髄移植と自家末梢血幹細胞移植には、それぞれ一長一短があるといえるだろう。ヨーロッパのデータでは、非血縁者による骨髄移植は移植に伴う死亡が半数を超え、三十五歳以上に限ると、実に八割が移植関連で死亡している。

 

 一方、自家末梢血幹細胞移植では移植関連死は一割弱。四十歳以上で移植し、二年間、再発もせず無病で生存する率は二五%程度という。

 

 「骨髄移植ができない人は試してみる価値があるのではないでしょうか」

 

 と藤井部長は言う。

 

 男性会社員Bさん(当時51歳)は職場の健康診断で末梢血液異常を指摘され、藤井部長の診察を受けた。検査では白血球が少なく、芽球の比率が高かった。藤井部長は骨髄検査の結果、MDSのRAEB-tと診断、すぐ入院してもらった。

 

 シタラビンの少量投与で異常な白血球を減らしてから強力な化学療法を行い、一ヵ月半で寛解に。その二週間後にシタラビンを大量に投与。異常な細胞をたたいてから末梢血幹細胞を採取し、凍結保存した。Bさんの体力回復を待って約一ヵ月後に移植した。翌日からM‐CSF(商品名ロイコプロール)という造血薬を使って血球の回復を図った。経過は順調で、移植から二ヵ月足らずで退院。

 

 「ところが、二年ほどで再発したんです。当時は経験不足で、シタラビンの大量投与療法を一回やって安心してしまったからでしょう」

 

 藤井部長は、再発したBさんに前と同じ治療をした。シタラビンの大量投与療法を六週間ほどの間隔で繰り返したあと、二回目の自家末梢血幹細胞移植を実施。血球の回復を促すため、赤血球と血小板の輸血を半年ほど続けた。約一年間の入院生活を送り、無事退院。一ヵ月半の自宅療養を経て職場復帰した。発病から九年半、二度目の退院から六年たつが、元気に仕事を続けている。