急性骨髄性白血病を通院で治す

 

 急性骨髄性白血病は、非常に進行の速いがんだが、最近は化学療法が奏功し、寛解率(血液や骨髄にがん細胞がなくなること)や治癒率もかなり高くなった。しかし、高齢者などでは、強力な化学療法が実施できないケースも少なくない。

 

 六十四歳の男性Bさんは、発熱や食欲不振を訴えて、浜松市にある県西部浜松医療センターの感染症(血液)科を訪れ、検査の結果、急性骨髄性白血病と診断された。主治医の矢野邦夫科長は言う。

 

 「『強い抗がん剤治療はやりたくない』という本人の希望もあり、できるだけ普通の生活を送りながら、延命を図ることにしました。このような場合、予後は一般に三ヵ月ほどですが、半年後に娘さんの結婚式があり、なんとか出席したいとのことでした」

 

 最初は入院して、シタラビン(商品名キロサイドなど)という抗がん剤を毎日、朝夕二回、注射した。そして二週間後に退院。抗がん剤をSPAC(シタラビンオクフォスファート。商品名スタラシド)という経口薬に切り替えた。SPACは肝臓で代謝される過程でシタラビンに変化する。自宅で服用しながら、シタラビンの注射と同様の効果が期待できる。

 

 「SPACはQOL治療という観点では、非常に有効な抗がん剤です。副作用の吐き気は制吐剤で抑えられるし、脱毛などはいっさいありません。当病院の成績では、末期患者のうち約半数で、がん細胞の抑制効果があり、発熱や出血などの症状も消失。外来治療や外泊が可能となりました」 Bさんは週に一度通院しながら、自宅でSPACを服用。一週間後の検査では、白血球に占めるがん細胞の割合が服用前の三六%から一五%に減少していた。

 

 その後、病状が悪化して一時、入院したが、再び持ち直し、念願だった娘さんの結婚式にも出席、その記念写真を嬉しそうに見せていた。奥さんと一緒に旅行にも出かけた。一年後に亡くなるまで、自宅でほとんど普通に生活できた。

 

 「QOLを高めるため、末期の患者さんにも、できる限り自宅に戻ってもらい、通院治療を勧めています。また、退院が難しい人にも積極的に外出や外泊をしてもらいます。ある十九歳の娘さんは、友達を呼んで、さよならパーティーを開きたいとのこと。で、酸素吸入をしながら自宅に一旦戻り、その翌日、静かに息を引き取りました」