「子宮奇形」:子宮形成術で妊娠率アップ

 

 

 B子さんは月経の周期も量も正常だったが、結婚後三年間、子供ができなかった。筑波大学附属病院産婦人科不妊外来で診察を受け、子宮卵管造影検査で子宮奇形が見つかった。ほかに不妊原因が見当たらないため、担当の西田正人助教授は子宮形成術を勧めた。

 

 子宮奇形は胎児のとき、生殖器の形成過程で生じる。不妊や流産、早産に関係する奇形で最も多いのは「中隔子宮」で、約三割を占める。子宮を左右に隔てる壁があるものだ。壁が子宮頸部近くにまで達して内腔を二分している完全中隔子宮と、壁は途中までで内腔がハート形になっている不完全中隔子宮がある。B子さんは後者だった。

 

 二つに分かれている子宮を一つにするのが子宮形成術である。いろいろなやり方があるが、西田助教授は従来の術式を組み合わせた独自の手法を開発した。

 

 不完全中隔子宮の場合、壁の付け根周辺の子宮底が厚くなっている。西田式では、まず、その部分を楔形に切り取って子宮底の厚みを均一にする。さらに、子宮底を切開して、問題の壁を引っ張り上げた状態にして縫合する。これで子宮腔は隔てるものがなくなり、広くなる。

 

 手術は全身麻酔をし、開腹して行われる。入院期間は一週間から十日だ。B子さんもこの手術を受けた。術後は三ヵ月の避妊を指示され、その後、再び子宮卵管造影検査を受けて治癒が確認された。その四ヵ月後に妊娠し、帝王切開で男の子を出産。二年後には女の子も誕生している。

 

 「子宮奇形が流産や早産の原因になることはよく指摘されます。が、不妊の原因になるという専門家はまだ少数派です。子宮奇形のある人は、ほかの不妊因子も伴っていることが多いからです」

 

 と西田助教授。

 

 子宮奇形以外に原因が考えられないのに、ほかに原因を求めたり、原因不明のまま体外受精などが行われ、子宮形成術が実施される例は少ないという。

 

 西田助教授がこれまでに手術した子宮奇形の患者六十七人を調べたところ、興味深いデータが得られた。患者を不妊群と流産群に分けて手術後の妊娠率などを比較したものだ。それによると、不妊群であると流産群であるとにかかわらず、「子宮奇形以外に不妊原因のない単純群」は九〇%前後が妊娠し、七〇%以上が無事に出産した。これに対し、「ほかの原因もある複合群」の妊娠率は六〇%程度で、出産できたのは四〇~五〇%たった。

 

 「私は、この数字から子宮奇形が単独で不妊原因になりうると考えています。ほかの不妊治療で妊娠率が九〇%を超えるものはありません。今後、子宮形成術は流産対策だけでなく、不妊症も対象にすべきではないでしょうか」