年間十万人が大腿骨骨折

 

                          骨粗霧症が進むと、骨折が心配になる。寝たきりの原因になる大腿骨頸部骨折は年間十万人に起こっているという。東京都老人総合研究所(板橋区)疫学部門の鈴木副所長は、

 

 「加齢に伴う骨量の減少は、だれにでも起こる老化現象で、治療で進行を遅らせることはできても、完全には食い止められません。そこで高齢者の場合、骨粗霧症対策の最大の目的となるのが骨折予防です。とくに、大腿骨頸部骨折の九割は転倒によって起きますから、いかに転ぶのを防ぐかが鍵になります」と言う。

 

 転倒を引き起こす原因は何なのか。鈴木副所長らは、五百人以上の高齢者を対象に五年間の追跡調査をした。その結果、転倒しやすいのは主に次のような人たちだった。

 

▽過去に転倒経験がある。

 

▽自由歩行(普通に歩くこと)のときも、最大歩行(できるだけ速く歩くこと)のときも速度が遅い。

 

▽握力が弱い。

 

 たとえば、普通に歩いたとき、一秒間に丁二八片以上歩ける人は転倒率がI〇%程度だった。が一片に満たない人は二五%以上と明らかに高かった。「つまり、歩くことを中心にした身体能力が落ちてくると、転倒しやすくなるわけです。これまでは骨をいかに強くするかが強調されてきましたが、転倒予防のためには、骨よりむしろ筋肉を鍛えることが重要ともいえるでしょう」

 

 と鈴木副所長。

 

 昔の日本人女性は体も小さく、骨量も低く、牛乳などの飲用量も少なかった。それにもかかわらず、大腿骨頸部骨折の頻度は欧米女性の三分の一しかなかった。

 

 これは「ジャパニーズーパラドックス」と呼ばれるが、その答えのひとつが伝統的な日本の生習慣流産は適切な治療で防止できる

 

 

 これまで三回妊娠し、すべて流産でした。かかりつけの病院でホルモンや免疫、子宮の形の検査などを受けましたが、原因がわかりません。流産を防ぐ方法はあるでしょうか。

                                   (静岡県・主婦・34歳)

 

●自己免疫疾患の対策

 

 妊娠を完遂できない状態を「不育症」といい、大部分は自然流産を繰り返す。自然流産自体は年間四十万件を上回ると推定されている。わが国の年間出生数は百二十万前後だから、四人に一人は流産していることになる。

 

 不育症の治療で有名な、東海大学医学部(伊勢原市産婦人科牧野恒久教授は言う。 「自然流産は一種の自然淘汰と考えられてきたため、医師も、疾患だという認識が浅く、取り組  みも遅れています。しかし、自然流産を三回以上繰り返す『習慣流産』には必ず原因があります。 男性側の因子もあるので、夫婦で総合的な検査を受けることが大切。原因に即した適切な治療を  することで、出産できる例は多いですよ」

 

 A子さん(37)は十年前に結婚、二年後に正常分娩で長女を産んだ。その三年後、計画どおりに二人目を妊娠したが、十六週で流産。同じ年に再び妊娠し、今度は十四週で、翌年は九週で、その二年後には十一週で流産か子宮内胎児死亡という結果になった。

 

 三十五歳になっていたA子さんは、出産のタイムリミットも近いと考え、牧野教授の診察を受けた。習慣流産の検査は内分泌的機能、染色体、子宮形態、各種免疫など多岐にわたるため、約二ヵ月かかった。男性側因子にもなる染色体の検査は夫にも受けてもらった。

 

 その結果、A子さんは自己免疫疾患の一つである「抗リン脂質抗体症候群」とわかった。細胞膜の成分であるリン脂質を攻撃する自己抗体ができる病気で、血小板減少や血栓症が起こりやすい。が、A子さんにそうした症状は見られなかった。

 

 実は、牧野教授は初診のとき、抗リン脂質抗体症候群ではないかと疑ったという。A子さんから、長女の妊娠中に受けた梅毒検査で偽陽性反応が出ていたと聞いたからだ。

 

 「抗リン脂質抗体を持っていると、梅毒血清反応が偽陽性になることもあります。梅毒にかかるような覚えもないのに、ぬれぎぬを着せられ、夫婦間がうまくいかなくなることもある。とんでもない話ですよ」

 

 この症候群には薬物療法が効く。抗体価が高い場合はステロイド薬(プレドニンなど)で抗体の勢いを弱め、血栓予防には血液の凝固を抑える低用量アスピリン、できた血栓を溶かすにはへパリンを使う。補助的に漢方薬の柴苓湯が用いられることもある。

 

 A子さんには、まずプレドニンと低用量アスピリンを投与した。治療開始から一年ほどで妊娠したので、プレドニンを増量し、低用量アスピリンはそのまま継続。妊娠三十三週でプレドニンをやめ、ヘパリンに切り替えた。経過は順調で、A子さんは今年一月、女の子を出産した。

 

 習慣流産の原因では、抗リン脂質抗体症候群に代表される自己免疫疾患が一五~二〇%を占める。ほかに、母体が胎児を異物と認識する「母児間の免疫失調」や子宮奇形がそれぞれ同じくらいあり、ホルモンの異常、感染症なども影響する。

 

 もうひとつ、染色体異常が原因となる例が約一〇%に見られる。その半数は男性側の染色体異常だ。遺伝性があるので、母親など近い血縁者に流産を繰り返した人がいるかどうかが、診断上、有効な情報になる。保因者には遺伝相談が行われる。

 

 「流産すると、女性の心は傷つきます。ペビーカーを見てもジェラシーを感じたり……。流産はいろんな因子がからんで起こるものなのに、一方的に自分を責めていることが多い。周囲の人がもっと理解を示してほしいですね」