骨粗しょう症:50歳からの骨量アップ

 

●入院ドックで個人指導

 

 東京都内の主婦A子さん(65)は十年前の五十五歳のとき、背中の痛みを訴えて近くの病院で診察を受けた。検査の結果、骨密度が低く、骨粗鬆症と診断された。

 

 その後、五年間、処方されたカルシウムとビタミンDを飲み続けたが、背中の痛みは思ったほどよくならない。そんなとき、国立西埼玉中央病院(所沢市)整形外科に「骨粗鬆症の予防と治療ドック」があることを知り、受診することにした。

 

 このドックは一九九二年に開設。骨量減少者と骨粗鬆症患者を対象に一~四週間の入院コースを設け、検査と治療、食事や運動などの日常生活の指導をしている。

 

 整形外科の滝澤博医長はこう言う。

 

 「高齢になって骨粗鬆症ができあかってしまってからより、その一歩手前、骨量が減りだす更年期前後から治療を始めたほうが、より効果的です。将来、骨粗鬆症で泣かないための予防的治療、それがドックの目的です」

 

 閉経を迎えると、骨吸収(骨からカルシウムが溶け出すこと)を抑制する女性ホルモンのエストロゲンが激減し、骨がもろくなり始める。これを「閉経後骨粗鬆症」という。A子さんもそうで、ドックに一週間、入院した。

 

 検査の結果、骨密度は正常より二五%ほど少なく、血中の女性ホルモンやビタミンDの値も低かった。脊椎や腰椎に圧迫骨折はなかった。骨密度だけみると、まだ「骨量減少」(後述)の段階だが、総合的に判断して、中等度の骨粗鬆症と診断した。

 

 そこで滝澤医長はエストロゲン製剤(商品名エストリール)とビタミンDを処方した。エストロゲン製剤の投与にあたっては、婦人科などの協力を得て、子宮がんや乳がんがないことを事前に確認した。

 

 薬物療法だけでなく、日常生活での注意も不可欠だ。ドックでは、患者に食事調査表を配り、入院前一週間のメニューをすべて記入してもらう。カルシウムやビタミンDなどが足りているかどうか、栄養士がチェックし、食生活のアドバイスをするためだ。また、理学療法士が腰痛体操なども指導している。

 

 適正な食事や運動が自宅に帰ってからも長く続けられるよう、患者の症状に合わせた個別指導を徹底させているわけだ。

 

 A子さんは退院後、毎日、カルシウムを九〇〇ミリグラム摂取するよう心がけた。以前からやっていた水泳に加え、ウォーキングや腰痛体操にも励んだ。努力のかいあって骨密度は着実に増えだした。

 

 九六年に改定された骨粗鬆症の診断基準では、日本人女性の腰椎の骨密度は、正常値が一平方センチ当たり約一グラム。その七〇%未満が「骨粗鬆症」で、七〇~八〇%までが「骨量減少」とされている。 A子さんの場合、入院当初は七五%程度だったが、一年後には八二%、三年後には八五%、そ

して五年後には九一%に増加した。五年間で一六%もアップしたことになる。

 

 「放っておくと、閉経後は一年に三%くらいずつ骨密度が減っていきます。その減少分を勘案すると、A子さんの治療効果はかなり大きかったといえるでしょう。背中の痛みもすっかり消えました」

 

 A子さんは薬物療法を五年間で終了。以後は食事と運動の生活療法を続けながら、年に一度、骨密度を測定していくことにしている。「もう老後が怖くなくなった」と本人も喜んでいるそうだ。 

 

 このドックの費用は、健康保険がきくので、一週間の入院の場合、三割負担として六万円余。  評判を聞きつけた遠方からの患者も多く、予約は半年先までいっぱいという。 

 

   骨粗霧症の診断や治療には整形外科や婦人科、内科、検診機関などがかかわっている。滝澤医長は、「検診で骨量減少と言われても、どこでどんな治療を受けていいか、わからない人もいます。ホルモン療法が有効なのに、カルシウム製剤ばかり投与されている例もある。骨粗粗症の原因は多岐にわたりますから、検診機関や各診療科が協力して、その患者さんに合った適切な治療をしていく必要があります」と強調している。埼玉県では現在、滝澤医長や医師会などが中心となって骨粗鬆症対策の連携システムづくりに力を入れている。検診機関↓骨粗しょう症を扱う地域の病院・医院専門外来のある中核病院という流れで、各医療機関が協力して治療に取り組む。全国初の試みで、年内にも動きだすという。