月経に伴う頭痛対策

 

 会社員のA子さん(25)は月経が始まる二日ほど前から下腹部痛や全身のむくみ、頭痛などの症状が出て、月経三日目ぐらいまで続いた。とくに朝起きたときの頭痛がひどく、頭に大きな石がのっているような感じに。最も症状の強い月経の二日目前後には会社を休むことが多かった。

 

 同僚だちから「ずる休み」と思われているフシもあり、悩んだすえに、東京医科歯科大学医学部附属病院(文京区)産婦人科の麻生武志教授の診察を受けた。

 

 「このような患者さんには、まず血液検査や超音波検査をして、子宮内膜症子宮筋腫感染症などの有無を調べます。そうした原因疾患がまったくない場合、月経困難症や月経前緊張症と診断します。ただし、治療対象になるのは、症状が重く、日常生活が困難になる場合です」

 

 症状が月経前から始まり、月経中も続くのが月経困難症で、A子さんはこのヶIスだ。月経の三~五日前ごろから症状が現れ、月経が始まると軽快。または、なくなる場合を月経前緊張症という。

 

 A子さんのように、血管性の頭痛である「片頭痛」を訴える例は少なくない。

 

 「月経時の症状にはエストロゲンなどの女性ホルモンが深く関係しており、頭痛の発生にも、その分泌量の変化がかかわっているのです」

 

 麻生教授は、片頭痛が起こるメカニズムを、こう説明している  。

 

 脳の視床下部を中心に自律神経中枢の興奮が起こると脳血管が収縮する。すると、頭蓋内の恒常性を保つために二次的に血管拡張が起こり、頭痛が発生する。この血管収縮のときには血中のエストロゲン値が上がり、血管が拡張して頭痛が始まると、その値が下がっているのだという。

 

 「問題は、月経周期に伴うエストロゲン値の変動なんですね。たとえば、頭痛持ちだった人が妊娠すると、その九割近くが軽快します。妊娠中はエストロゲン値の高い状態が持続しているからなんです。逆に、エストロゲン値が低いままで続く閉経後でも、ほぼ九割の人は頭痛が改善します。要するに、エストロゲン値が高いままでも低いままでも、急激に変動しなければ頭痛は起こりません」

 

 また、月経前の二週間ほどはプロゲステロンという女性ホルモンが多く分泌される。このホルモンには体内に水分をため込む作用もある。これがむくみの原因になり、同時に頭蓋内の血管の拡張も促すという。

 

 では、どんな対策があるのか。麻生教授は、まず生活改善が大切だとして、

 

 ①体を冷やさない

 

 ②ふだんから姿勢をよくする

 

 ③食事や睡眠などは規則正しくとる

 

 の三点を強調している。

 

 「これだけで来院患者さんの三分の一に効果が見られます。鎮痛薬が効かなかった人でも、少しずつ症状が軽くなっていきます」

 

 薬物治療では、まずピリン系の解熱鎮痛薬を処方し、効果がなければ抗炎症薬のインドメタシンを座薬で用いる。この薬にはプロスタグランジン (子宮収縮に関係するホルモン)をブロックする作用がある。

 

 それでも痛みが続くようなら、低用量ピルを使い、一時的に排卵を止めてしまう。それによって、ホルモン分泌がごく少量となり、頭痛などの症状はほとんどなくなる。

 

 やせ形で足が細く、冷え性の人には、当帰芍薬散などの漢方薬も処方するという。

 

 A子さんは、インドメタシンの座薬を月経一日前から一日二回、使った。一ヵ月目は効果がはっきりせず、会社を一日休んだ。が、次の月経前にはかなり症状が軽くなり、会社を休まずにすんだ。四ヵ月ほど治療を続けた結果、薬なしで、ふだんどおりに生活できるようになった。