子宮内膜症:内分泌撹乱物質の研究

 

 子宮内膜症は年々増加しているといわれる。厚生労働省子宮内膜症研究班が一九九七年十月に七百八十七施設を対象に調査した結果、この病気で治療を受けている患者は全国で約十三万人と推定された。

 

 とくに二十代後半から三十代の患者が突出。この年代の女性が罹っている病気の第一位にランクされている。診断がついていない人や治療を受けていない人を加えれば、百万~二百万人の患者がいると推計されるという。

 

 増加理由の一つとして、最近、注目されているのが内分泌撹乱物質、いわゆる環境ホルモンの代表格であるダイオキシンだ。サルにごく微量のダイオキシンを四年問投与し、十年後に調べたところ、子宮内膜症が多発し、しかも重症化したという報告が九三年にアメリカで出された。

 

 これについて、婦人科疾患と環境ホルモンに関する研究の第一人者である東京大学医学部附属病院女性外科の堤治教授は、

 

 「ダイオキシン特定疾患との結びつきを調べる動物実験はいくつかありますが、最も微量で発症したのが子宮内膜症です。ただし、その後、ダイオキシン子宮内膜症発症は無関係とする否定的な報告もあり、現状ではなんともいえません」

 

 

 環境ホルモンの多くはエストロゲンと構造が似ているため、エストロゲンレセプターに結合し、ホルモン環境を乱すと考えられている。だが、ダイオキシンがくっつくレセプターはそれとは異なるので、子宮内膜症を発症させるメカニズムの解明はこれからの研究課題だ。

 

 堤教授は、生殖機能に対するダイオキシンの影響を調べている。約三子個のヒトの受精卵にさまざまな濃度のダイオキシンを加えて培養した結果、ごく微量でも受精卵の発育が抑制されることがわかった。ところが、一定の範囲より濃くなると、むしろ発育は促進され、さらに高い濃度では再び抑制されたという。

 

 「ふつう、毒物は濃度が高くなるにつれて生体に及ぼす影響も大きくなるのですが、ダイオキシンは濃度によってさまざまな作用をします。まさに『撹乱』ですね」

 

 と堤教授は話している。