子宮内膜症:子供が欲しい人には腹腔鏡検査が好適

 

 結婚五年になるのに子供ができません。産婦人科で「子宮内膜症の疑いも」と言われ、腹腔鏡検査を勧められました。この検査をするときは、おなかを少し切るのだそうですが、そこまでしなければいけないのでしょうか。                   (埼玉県・主婦・31歳)

 

●電気メスで病変部を焼ぐ

 

 会社員のA子さん(32)は結婚後四年たっても妊娠しないため、一年前から産婦人科に通い始めた。いろいろな検査を受けたが原因がわからず、京都府立医科大学附属病院婦人科に紹介されてきた。同科で不妊外来と子宮内膜症外来を担当する北脇城講師が月経の状態を尋ねると。

 

 「生理は順調ですが、もともと生理痛が強く、二年前からさらにひどくなりました。二日目は痛くて仕事にならないので、いつも生理休暇をとっています」

 

 とのこと。内診、超音波検査、血液検査などの結果はいずれも正常だったが、北脇講師は、症状から子宮内膜症を疑った。子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が、腹腔内など、あるはずのない場所にできて増殖する原因不明の病気だ。主な症状は月経痛で、慢性の骨盤痛や性交痛、排便痛を訴える人も少なくない。不妊との関連も深く、原因不明の不妊症の三〇~六〇%に子宮内膜症が、子宮内膜症の二〇~七〇%に不妊症が合併するといわれている。

 

 北脇講師は、A子さんに基礎体温をつけてもらい、約一ヵ月かけて子宮卵管造影や夫の精液検査などをした。それでも原因が特定できなかったため、腹腔鏡検査を勧めた。

 

 「この検査は診断を確定するのに必要なのですが、子宮内膜症の病変があれば同時に手術もして、六ヵ月、経過を観察します。検査と同時に治療もするわけですから、その後の経過観察中に妊娠する例も少なくないんです」

 

 腹腔鏡検査は、全身麻酔下で行われる。まず、おなかに直径約一言の穴を三つ開け、腹腔内に炭酸ガスを注入して膨らませ、臓器がよく見えるようにする。三つの穴から、先端にカメラを取り付けたスコープ、洗浄水射出装置付きの手術器具、排水用カテーテルなどを挿入する。

 

 モニター画面を見ながら病変部を電気メスやレーザーメスで焼き切り、癒着があれば剥離し、腹腔内を生理食塩水で洗浄する。健康保険がきくので三割負担として、入院費を含め約十万円かかる。

 

 A子さんは初診から三ヵ月後にこの検査を受けた。子宮壁にブルーベリースポットと呼ばれる直径一~二卜の病変が数個、見つかった。癒着は認められなかった。子宮内膜症の進行期は四段階あり、A子さんの状態は最も早期のI期だった。

 

 北脇講師は電気メスで病変部を焼き、腹腔内を洗浄した。入院期間は四目。その四ヵ月後にA子さんは妊娠した。

 

 子宮内膜症の治療では、こうした外科療法のほか、薬物療法もよく行われる。

 

 「どちらを選ぶかのポイントは、赤ちゃんが欲しいかどうかです。妊娠を望む人には腹腔鏡検査を受けるよう指導します。また、卵巣内に古い血液がたまって腫れる『チョコレート嚢胞』が認められる場合も、腹腔鏡を用いて嚢胞を切除、または穿刺します。それ以外の人は主訴が月経痛であることが多いので、薬物療法になります」

 

 薬物療法では、まず非ステロイド性消炎鎮痛薬を投与、効果がなければ、ホルモン療法に切り替える。すでに子供をつくり終えた三十代以上の人は子宮筋腫や子宮腺筋症を合併している例が多く、ホルモン療法が中心になる。

 

 ホルモン療法には次の二種類の薬が使われる。▽GnRHアゴニスト=点鼻薬(ブセレリンなど)と注射薬

 

 (リュープロレリンなど)がある。中枢に作用してエストロゲン(女性ホルモン) の分泌を抑え、月経を停止させる。このため更年期症状が出るほか、長く続けると骨量が減少する副作用がある。▽ダナソール=男性ホルモン様作用のある内服薬。体重増加や男性化といった副作用があるほか、まれに血栓症を起こす危険がある。

 

 「どちらも原則として六ヵ月以上の投与はできません。また、休薬すると、高い頻度で再発します。副作用を軽くするため、最近は、GnRHアゴニストにエストロゲンとプロゲストーゲン(黄体ホルモン)製剤を併用し、血中のエストロゲン濃度の下がりすぎを防ぐ『アドバック療法』や、ダナゾールの少量長期投与などが試みられています」