ATK活性

 

 リンパ球がガン細胞を殺すプロセスでは二つの重要なポイントがあることがおわかりいただけたと思うが、さてそこで、ATK活性のない人にその活性を誘導する方法を説明していこう。

 

 まずガンの手術の際、患者の体内からガン細胞を取り出す。そして分子量五九、七〇タンパク質でチロシンのリソ酸化を起こす。同時に、同じ患者の末梢血からリンパ球を採取し、それを先のガン細胞に加えて培養し、ATKFの産生を誘導してやる。

 

 一回に採取するリンパ球は五〇億~八〇億個。血液の量にすると五~ハリヽツトルになる。血液をそんなに取ると貧血を起こしかねないので、リューコフェレイシスという血液成分分離器を使ってリンパ球だけを取り出す。

 

 手術ができずガン細胞が取れない場合は、ピシバユール、漢方薬などの免疫刺激剤を使ってリンパ球を刺激し、ATKFの産生を誘導する。ただし、免疫刺激剤なら何でもいいというわけではない。ガンの種類、個人による違いがあって、使う免疫刺激剤によってはかえってATK活性を下げる場合もある。内田教授の研究室では、どういう種類のガンにはどういう組み合わせの免疫刺激剤がいいかも調べてわかっている。

 

 ちなみに、内田教授らが使っている免疫刺激剤を挙げておくと、「ピシバユール」、「シソフィラソ」、「ウリナスタチソ」などのBRM、「インターロイキン2」、「インターフェロン」のサイトカイン「補中益気湯」、「六君子湯」、「十全大補湯」、「人参養栄湯」などの漢方薬である。

 

 こうしてリンパ球からATKFが産生されたことを確認すると、そこで、そのリンパ球を患者の体内に戻して、ガン細胞を攻撃させるのだ。これを一週間に一度の割合でくり返していくのである。

 

 理屈のうえでは、確かにこのATK活性をつけるATK療法は効果的と思わせるものがあるが、では、ほんとに実際の治療でそのような威力があるのだろうか。

 

 内田教授らのグループでは、そのことを確かめる試験を行っている。肝臓ガン、胃ガン、肺ガン、乳ガン、肉腫のガン患者に対して、手術前から先のような免疫刺激剤を施す治療をしたところ、ATK活性のない患者の半数以上にATK活性を誘導することに成功したという。前には述べなかったが、手術をする場合でも、この手術前からATK活性を誘導しておくというのが重要なポイントである。というのは、メスを入れた時点で、術後ガンがふたたび拡散に向かうか、撲滅される方向に向かうか、その分岐点となるからだ。その場合、手術のI~二週間前から治療にとりかかることになる。

 

劇的な成果

 

 また、とくに肝臓ガン患者四〇人に対しては、術後の治療経過をも追跡調査している。その結果、ATK療法を施してATK活性が誘導された患者のほとんどは術後四年以上にわたって再発もなく、生存していたが、ATK活性が誘導されなかった患者は予後が悪く、みな二年以内に再発し、四年以内に死亡していることがわかった。

 

 具体的な症例をみてみよう。

 

 これまでにいちばん劇的に治った例は、メラノーマになった五〇歳の男性会社員だった。悪性黒色腫ともいわれるこのほくろのガンは、皮膚ガンのなかでもきわめて悪性で、進行が早く、全身に転移しやすい。日本人ではとくに足にできやすいといわれる。皮膚表面に露出し、分泌物が出るようになったらきわめて危険である。

 

 この人の場合も発見が遅れ、すでに体のあちこちに転移が起こっていた。ことに脳にまで転移が起こり、肺には水がたまり、もう手術の施しようがなく外科医もお手上げの状態であった。残された命は一ヵ月もない状態だった。

 

 そんな彼が奇跡的に助かったのは、このガンが免疫力と深いかかおりのあること、そしてその免疫療法に取り組んでいた内田教授とめぐり会えたことだろう。

 

 内田教授が彼にATK療法を試みるや、彼の体は信じられないほど劇的な変化を見せた。まず1ヵ月で胸水が消えた。それに驚嘆する間もなく、今度は三ヵ月後に脳の転移巣がすっかり消えて、治ったのである。

 

 その後彼は社会復帰を果たし、一〇年たったいまもピソピソしており、ごく普通の人と変わらない生活を送っているという。

 

 肝臓ガンは、一昔前はほぼ半年の命といわれた。医療技術の進んだいまはそれほどではないにしても、残念ながら治療成績は相変わらずよくない。内田教授が診た五六歳の男性の場合はことにひどく、CT写真で見ると、正常な部分はほとんどなく、肝臓がまるごとガンに冒されていた。

 

 原発性肝臓ガンの大半を占める肝細胞ガンであった。しかもその肝臓がみるみる膨れ上がっている。もちろん、肝臓が生産している酵素のGOT、GPTもどんどん上がり、数百までいった。黄疸も出、腹水もたまっている。

 

 はっきりいって、手遅れだった。これではとても手術などできる状態ではない。

 

 ところが内田教授がATK療法を実施すると、たちまち効果があらわれ、一ヵ月後にはGOT、GPTが正常値にまで戻り、五年たったいまも生存している。

 

 もっとも、あれだけ巨大なガンがすっかり消えたというわけではない。いや、相変わらずガンは塊のまま残っている。ガンは残ってはいるが、ATK療法によってそれ以上には増殖せず、残されたほんの少しの正常な肝細胞の働きで生きてきたのである。

 

 このように、ガンが体内にあっても、体の生存システムにいたずらをしなければ十分生きていけるのだということを、この人は身をもって証明しているといえよう。