肉芽腫症

 

〔同義語〕ベック類肉腫Boeck's sarcoid、 ペニエ・ペック・シャウマン病morbus Besnier-Boeck-Schaumann

 

〔概念〕原因不明の全身性肉芽腫性疾患で、類上皮細胞結節が本態であり、皮膚のほか、リンパ節・肺・肝・髀・心筋・中枢神経系・腎・口腔粘膜・眼・骨・耳下腺その他の臓器を侵す。比較的まれで〔人口10万対0。75人〕、わが国では北ほど多く〔人口10万対:北海道0。9、東京1。1、大阪0。4、熊本0。1〕、欧州でも北欧〔スウェーデン〕に多い。皮膚病変発生率はヨーロッパ30%、日本11~17%、わが国における臓器別頻度は胸部95%、眼30%、皮膚11~17%、その他17%。

 

 〔皮膚症状〕臨床像より次のように大別、いずれ削蔓性に続き、寛解増悪を繰り返す。

 

 ①結節型、②局面型、③びまん浸潤型、④皮下型。

 

 1)結節型:結節性浸潤で円~楕円形の淡紅~暗紅色結節。多発することが多い。大結節型と播種状小結節型とに分け、後者の中には、きわめて小さく顔・頸に多発して(miliary sarcoid)、汗管腫や扁平苔癬に類似するものがある〔苔癬型〕。

 

 2)局面型:境界明瞭な扁平な浸潤局面で、のち中央は萎縮してやや凹み、辺縁が幅狭く隆起する。前額・頬・鼻に好発(Hutchinson's plaques)。

 

 3)びまん浸潤型:鼻・頬・耳・指趾に好発し、暗紅色の浸潤あるびまん性腫脹。指では指骨が同時に侵されることが多い。古くは凍瘡様狼瘡(lupus pernio Besnier)といわれた。

 

 4)皮下型:皮下に小結節として生ずるもので、しばしば他型皮膚病変または他臓器病変を合併。古くDarier-Roussy皮下類肉腫と称したもの。

 

   瘢痕浸潤:瘢痕部にサルコイド肉芽腫〔発赤・腫脹〕を生ずることがあり、それは砂や泥が入ったと思われる瘢痕に起こりやすく、 BHL に平行して消長し、多くは自然治癒する。膝蓋部、次いで肘頭部に好発する。巨細胞を混ずる類上皮肉芽腫内に異物が認められ、これは偏光顕微鏡下で重屈折性を示す。

 

 結節性紅斑様病変:他疾患の際のENとほば同様。3週ほどで自然消退する。関節痛・ブドウ膜炎を伴うことあり。

 

 魚鱗癬様サルコイドーシスichthyosiform sarcoidosis 〔Kauh 1978〕:主として下腿、あるいはその他体部に生ずる後天性魚鱗癬様皮疹で組織学的に本症と診断される。

 

 

 

 斜角筋リンパ節生検:図のような方式で行う〔Daniel法〕。サルコイドーシスの診断に役立つが〔肺型サルコイドーシスで70~90%陽性〕、肺癌・肺結核・悪性リンパ性などでもサルコイド反応を示すので判定には慎重を要する。

 

                     [他臓器病変]

 

 1)肺:肺実質内肉芽腫とBHL (bilateral hilar lymph node enlargement=両側肺門リンパ節腫脹)。BHLに始まり、次第に肺実質に細網状・粟粒状・結節状浸潤を来し、末期にはBHL消失し、肺野は線維症状となる。Gaシンチ異常集積像、気管支鏡的肺生検(TBLB)でもかなり高率に類上皮細胞肉芽腫が発見される。 95%に発生。

 

 2)リンパ節:上記肺門リンパ節の他、表在性・斜角・深部リンパ節の腫脹をみる。

 

 3)骨格筋:腓腸筋に多い。結節型・筋炎型・無症状型。ブラインド生検でも類上皮細胞肉芽腫が高率にみられ診断の一助になる。

 

 4)眼:ブドウ膜炎が多く、涙腺・結膜一角膜、さらに網膜・強膜・脈絡膜・視神経に病変を生じ、飛蚊症・霧視あり、約40%に発生。

 

 5)骨:指趾骨に多く、風棘{spina ventosa)や嚢腫状変化(ostitis fibrosa multi-plex cystica)を呈する。

 

 6)肝:20%に発生、肝腫、 ALP上昇、胆汁性肝硬変。

 

 7)脾:ときに脾腫。

 

 8)心:まれに生ずるが、直接死因となる[fatal myocardial sarcoidosis)。

 

 9)神経系:一過性片側性顔面神経麻痺。

 

 10)耳下腺:一過性腫脹。

 

 〔検査所見〕血沈促進、高カルシウム血症、7-グロブリン上昇、血清ACE(angiotensine converting enzyme)上昇、血清リゾチーム上昇、 RA、 RAHA陽性、細胞免疫低下。

 

 〔病因〕原因不明の類上皮細胞肉芽腫、 Propionebacterium acnesあるいはある種のMycobacteriumに対する肉芽腫性反応、あるいはその他のNoxeに対する肉芽腫性反応(?)。

 

 〔組織所見〕非乾酪性類上皮細胞結節。中央に類上皮細胞集団があり、巨細胞〔ラングハンス型および異物型〕を混じ、周囲をリンパ球浸潤がとり囲むときにフィブリノイド壊死巣。のち線維化。

 

   巨細胞内に次の封入体をみることがある。

 

   ①星状体(asteroid body)〔巨細胞中に空胞あり、そこに放射状突起を出す小体がある〕。②シャウマン体(Schaumann body)〔層状ないし貝殻状小体、カルシウム沈着あり、 ALP陽性〕、③硝子様封入体(glass-like inclusion)〔無色二重屈折性結晶物質〕。

 

 [診断]①臨床像〔皮疹・BHL〕、②組織所見[皮膚・リンパ節・骨格筋]、③Kveim反応陽性、④ツ反応減弱または陰性化、⑤DNCB感作不成立、⑥ACE上昇、⑦血中Ca上昇、⑧気管支肺胞洗浄法〔BAL; broncho-alveolar lavage〕による免疫的検査、⑨Gaシンチ[肺・肺門リンパ節への集積]。

 

 〔予後〕良好〔死亡率約2%〕。続発性緑内障などでまれに視力障害をきたす。

 

 〔治療〕ステロイド剤〔皮疹のみのときは局所的に;発熱、心・肺・眼侵襲のあるときにのみ全身的に〕、ドキシサイクリン〔P。acnesに対して〕。

 

   〔参考〕Kveim反応

 

   サルコイド病変のある脾・リンパ節を抗原とし、被検者の前腕屈側に皮内注射、4~6週後に生検、類上皮細胞結節のあるものを陽性と判定する。2~3週頃より丘疹を形成し週

頃から消失する経過を示すことが多い。 Siltzbach抗原、サ研究班抗原などがある。