老人性皮膚萎縮症、バッジ一二・ピエリーニ型進行性特発性皮膚萎縮症

 

老人性皮膚萎縮症atrophia cutis senilis

 

 〔症状〕40~50歳頃より、皮膚は菲薄化し、皮下脂肪の消失とともに弾性を失い、乾燥、粃糠性落屑を生じ、皺襞が著明となる。色素沈着・脱失、毛細血管拡張なども加わり、いわゆるしなびた老人の肌となる。外界の影響を受ける顔面・項頚・手足背・前腕下腿に特に変化が強い〔水夫皮膚(Seemannshaut、 sailors' skin)、農夫皮膚(Landmannshaut、 farmers≒kin)〕、項部では特に皺襞斜交して菱形皮野を形成し、毛孔開大、潮紅、色素沈着が加わって、いわゆる項部菱形皮膚(cutis rhomboidalisnuchae)を生ずる。老人皮膚は広義の癌前駆症ともいわれ、老人性角化腫、有棘細胞癌、基底細胞腫などを生ずる基礎となる。

 

 〔組織所見〕表皮菲薄化、表皮突起消失、表皮直下に好塩基性に染まる弾力線維の変性(basophilic degeneration)が著明(senile elastosis)。

 

   senile山stosisの顕著な一型として、老人男子の側額一眼窩周囲に多数の大小の黄白色丘疹が多発し、その中央に面皰様黒色小点を有するelasteidose cutanee nodulaire a kystes et a comedons 〔Favre et Racouchot〕がある。

 

15。斑状特発性皮膚萎縮症atrophia cutis idiopathica maculosa (macular atrophy)

 

 原因不明で斑状に皮膚の萎縮をきたすもの。

 

 1) anetodermia erythematosa (Jadassohn 1892〕:著明な潮紅と浮腫とをもって始まり、のち蒼白化、萎縮する。

 

 2) multiple benign tumor-like new growths of the skin [Schwenninger-Buzzi1892]:炎症症状を欠き、はじめより白色、柔軟なヘルニア状隆起として発する。

 

 3) anetodermie urticarienne [Pellizzari 1894]:じんま疹様発作が反復、顔面一体幹に斑状ないし広範に萎縮を生じ、老人様顔貌を呈するに至る。

 

 4) atrophodermia pemphigoides 〔Alexander〕:小水疱発作に引きつづき萎縮を生ずる。

 

 いずれも初期に浮腫・血管拡張・血管周囲性細胞浸潤、のち弾力線維の断裂・消失。

 

 

 

バッジ一二・ピエリーニ型進行性特発性皮膚萎縮症atrophoderma idiopathica progressiva 〔Pasini 1923-Pierini 1936〕

 

 若年者の体幹に生ずる大小のやや陥凹性の皮膚萎縮斑で、円形または楕円形、紫褐色、皮高よりやや陥凹し、自覚症状なく、両側性あるいは片側性、不規則にまた列序性に発し、体幹に多い。慢性に徐々に進行。限局性強皮症の非定型例〔scleroderma atrophique d'emblee Brocq〕となすものもあるが本態は萎縮症に近い。

 

 

進行性顔面片側萎縮症hemiatrophia faciei progressiva 〔Romberg 1846〕

 

 20歳までの女子に多く、三叉神経領域の神経痛様疼痛に引きつづき、片側性の皮膚。・皮下脂肪・筋・骨が萎縮し、患側に屈曲して左右非対称となる。皮膚は菲薄化し、色素沈着ないし脱失をきたし、発汗障害、脱毛などもみられる。まれに体幹にも波及、また脳皮質を侵して反対側てんかんをきたす。頭部外傷、急性熱性疾患〔麻疹・猩紅熱・ジフテリア・扁桃炎〕に続発することも多く、神経原性の萎縮との考えがあるが、一方抗核・DNA抗体陽性、限局性強皮症〔とくに剣創状強皮症〕との合併などから限局性強皮症の一型との考えもある。数年~10年で進行が止まるので、その後に必要に応じて形成外科的修復を図る。