膠原病や自己免疫疾患は治せる疾患

 

 これまで膠原病あるいは自己免疫疾患は、アレルギーのなかに分類され、過剰免疫反応による組織障害と理解されてきました。そして、自己応答性T細胞や自己抗体産生B細胞が悪者扱いされてきたのです。このような考え方では、膠原病や自己免疫疾患の病態を正しく把握することはできません。正しい病態把握がないと正しい治療もみえてきません。

 

 また、もうひとつの問題があります。ステロイドホルモンをたんに強力な抗炎症剤として考えることはできません。ステロイドホルモンは生理的な量以外に生体に投与されたとき、組織に停滞して酸化コレステロールに変成し、むしろ炎症を悪化させるのです。

 

 このような二つの新しい理解があれば、膠原病や自己免疫疾患は難病ではなく、治せる疾患ということができます。

 

 医師はだれでも、自己免疫疾患の末梢血ではリンパ球がいちじるしく減少していることを知っています。しかし、昔から自己免疫疾患は免疫機能の異常亢進によって起こることが提唱されてきたので、この事実(免疫抑制)と考え方(免疫亢進)のギャップを埋めることができないまま、問題が放置されてきました。

 

 しかし、ここ一〇年間の私たちの研究で、謎がしだいに明らかになってきました。私たちのからだには進化の極限にあるT細胞とB細胞のほかに、進化レベルの古い胸腺外分化T細胞や自己抗体産生B細胞があり、内部監視機構として働いています。つまり、生体内に生じた異常自己細胞を除くのに重要な役割を果たしているのです(第三章参照)。

 

 自己免疫疾患の場合、ヒトでもマウスでも、胸腺でも末梢でも免疫抑制状態にありますが、逆に胸腺外分化T細胞や自己抗体産生B細胞は増加しています。つまり、自己免疫疾患の免疫状態は、内部監視の免疫システムの過剰活性化といえます。

 

 免疫抑制は、まず進化レベルの高いT細胞とB細胞に襲いかかります。しかし、古い免疫システムである胸腺外分化T細胞や自己抗体産生B細胞は、免疫抑制に対して抵抗性が高いのです。

 

 慢性関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)の患者では、この病気の発症前に風邪の症状があったことを聞き出すことができます。また、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や強皮症では、激しい身体的ストレス(過労など)や精神的ストレス(心の悩みなど)が発症前にあったことを聞き出すことができます。

 

 精神的ストレスでも生体系は交感神経緊張状態となり、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)と副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)が放出され、胸腺は萎縮して免疫抑制をきたします。

 

 このようなウイルス感染やストレスによる免疫抑制は、胸腺萎縮(胸腺細胞のアポトーシス)を誘発させますが、細胞のアポトーシスは免疫系にとどまりません。生体細胞の破壊もともなっています。

 

 そして、この反応が過剰だと古い免疫システムの自己応答性が逆転して不利に働くようになり、自己免疫疾患が発症するものと考えられます。この反応過剰を引き起こす原因に、①感染時にさらにストレスが加わること、②ストレスが持続すること、③間違った治療がおこなわれること、などがあります。このようにして、自己免疫疾患が起こっても、あるいはより軽い風邪症候群が起こっても、多くの場合は自然に治癒に至ります。

 

 このとき、自己応答性の免疫システムは、むしろ有利に働いているものといえます。しかし、ストレスの持続や、痛み止めやステロイド剤の使用によって免疫抑制状態が維持され、病気の治癒が得られなくなることを考えなくてはなりません。

 

安保徹の病気を治せる医学』より