ビタミン欠乏症

 

 ビタミン欠乏は,食餌性欠乏と,体内で吸収不全・代謝障害により生じ,一般に水溶性ビタミン欠乏症は短期間に発し,脂溶性ビタミンは長期間を要する.

 

   1.ビタミンA:皮膚乾燥・落屑〔乾皮症(xerosis)〕.毛孔角化の傾向をきたす→毛孔性紅色粃糠疹・魚鱗癬・尋常性座瘡.いわゆるビタミンA欠乏性角化症〔phrynoderma(Nicholls)〕は,明らかな診断名を与えるほどではないが,ビタミンA欠乏症を一括したもので,皮膚の粗槌乾燥化.毛孔性角化があり,しばしば夜盲,眼球乾燥(xerophthalmia),口腔乾燥(xerostomia)などを伴う.戦中戦後の栄養失調者〔特に幼児〕に多かった.最近ではビタミンAよりもビタミンF,Bsなど他のビタミン欠乏症を重視する傾向にある.

 

   2. ビタミン B2〔アリポフラビノージス(ari boflavinosis)]:口角びらん症(angulus infectiosus)・脂漏性皮膚炎・眼瞼炎・口唇炎・舌炎・胃腸障害・座瘡様発疹.

 

   3.ビタミンB複合体:ペラグラ〔後述〕.

 

   4.ビタミンC:毛包周囲性出血・血腫・毛孔性角化・貧血・創傷治癒遅延・食欲不振・無関心状態・歯肉出血性腫脹〔rf p. 146壊血病〕.

 

   5.ビタミンD:くる病・骨軟化症.逆に過剰症の場合には皮膚・血管一心筋・腎・肺の石灰沈着,下痢,頭痛,腎障害をきたす.

 

   6.ビタミンH:脂漏.

 

○ペラグラpellagra

 

 〔症状〕

 

 1)前駆症状:全身倦怠感,前駆性紅斑[手背に灼熱感のある紅斑が数日つづく]

 

 

 2)皮膚症状:露出部〔手足背・前腕下腿伸側・顔面・上胸三角部〕に,特に日光曝射後に,灼熱感・ 痒を伴った赤褐色紅斑を生じ,ときに水疱・びらん・潰瘍・結痂,皮膚は乾燥粗槌化,やがて色素沈着と萎縮とを残して消退する.春夏に増悪.

 

 3)消化器症状:激しい下痢〔ペラグラ性チフス(typhus pellagrosus)].その他,食欲不振・嘔吐・無酸症・口喝・舌炎・口内炎・口角びらん症・味覚変調など.

 

 4)神経症状:てんかん様発作・運動障害一片頭痛睡眠障害・知覚異常・振世ん・けいれん・幻覚・躁うつ病・痴呆状態など.dermatitis, diarrhea, dementiaすなわち3Dをペラグラの主徴候という.

 

 〔病因〕ビタミンB群,特に二コチン酸アミド欠乏症.アルコール性肝障害も関与する.イタリヤ・バルカン諸国・米国南部のようなトウモロコシ常食地方に多かったことから,その腐敗による中毒と考えられたが,むしろそのアミノ酸組成の欠陥が関与したものと思われる.光線過敏性因子はビタミンB群欠乏による.わが国では昭和14~15年頃本土および朝鮮に流行したが,今日ではきわめてまれで,まれに INAH内服者,胃切除術後にみられる.青森県のシビ・ガッチャキ症も本症に近いものと考えられる.現在の主な発症因子として,①欠陥食品,②吸収不良[胃切除後など],③慢性アルコール中毒,④トリプトファン代謝異常,⑤化学療法剤があげられる.

 

 〔診断〕二コチン酸アミド代謝産物である N-二コチン酸アミドと6ビリトンの尿中排泄量の低下.

 

 [予後]下痢・神経症状が進行すれば死亡することもある.

 

 〔治療〕①食事改善,②ビタミンB群特に二コチン酸アミドの大量投与,③遮光.

 

   ①カザール頚帯Casal's necklace, Casalsches Halsband : 頚飾り状の紅斑で,本症に特徴的とされる.②仮性ペラグラ(pellagroid):トウモロコシ摂取によらず生じたペラグラをこのように呼んだが,トウモロコシ主因説の否定された今日原義は失われ,皮膚症状のみの不全型をこのように呼ぶことが多い.