ポルフィリン代謝異常症

 

 ポルフィリン代謝はグリシンとサクシニールCoAがALAS(ALA synthetase)の作用でALA(∂-aminolevulinic acid)となり,次々と,酵素の作用によりプロトポルフィリになり,これに鉄が結合してヘムとなり,ヘモグロビンの素材を生成する重要な代謝〔①→②→③→④→⑤→⑥〕であるPBG (porphobilinogen)が4個連結してポルフィリン環ができるとき,理論的には4種の贄肬体が可能であるが,体内でできるのはI型とⅢ型のみであり〔③,⑦〕,Ⅲ型が汪倒的に多くて利用され,I型はごくわずかで,しかも生体に利用されることなく,そのまま排泄されてしまう.

 

 ポルフィリン症は,代謝経路に関与する酵素のいずれかに障害があるが,現在のところ明らかなのはALASの上昇によるポルフィリン前駆体〔ALA・PBG〕の過剰生産〔①,②〕があり,以下酵素障害の部位によってそれぞれ異なった病型を生ずる.皮膚症状はポルフィリン体による光線過敏症〔作用波長>400nm〕で水疱形成を主体とする.

 

 骨驗(erythropoietic p. )と肝性(hepatic p. )とに大別し,以下1,2が骨髄性,3以下が肝性である.

 

 1. 先天性ポルフィリン症porphyria congenita 〔Giinther病1911〕

 

 〔同義語〕congenital erythropoietic porphyria

 

 〔症状〕川乍直後より2~3年のうちに発症する。

 赤色尿:おしめ赤染で気付く.ウッド灯で紅赤色螢光uroporphyrin による.

 

 2)皮膚症状:春夏に露出部に水疱を生じ急激に膿疱化し,潰瘍となり,これを反復して瘢痕および変形〔耳朶・鼻の欠礼瘢痕性脱毛,眼険外反〕をきたす.あとに稗粒腫を残すこともある.色素沈着のほか多毛症を頻発し告毛部のみならず,眉毛濃化・髪際下降などかみられる.指皮膚の萎縮には,拘縮・骨吸収・断指などが伴う.

 

 3)赤色歯erythrodc nlia:乳蘭・永久歯ともにみられ,ホウロウ質中にuropor-phyrinが沈着.蛍光を発する.

 

 4)溶血性貧血と牌腫:ほとんどにみられ,死因となる.

 

 〔病因〕常染色体性劣性遺伝.図20-17の③の酵素〔uroporphyrinogen isomerase〕の異常でⅢ型生成が減少し,過剰生産されたALAがI型生成へ進行,骨髄内で1型の大量生産が起こり,これが骨髄・血液・皮下・尿など体内に充満,皮膚では光線過敏症を惹起する.

 

 〔治療〕遮光,脾摘.

 

2.骨髄性プロトポルフィリン症protoporphyria erythropoietica (EPP)〔Magnus1961〕

 

 [症状]幼児期より,日光照射後数分にして裸露部の熱感・疼痛とともに潮紅・浮腫(actinic edema)・じんま疹(actinic urticaria)・小水疱(hydroa aestivale)・湿疹様皮疹を生じ,のち結痂,瘢痕化〔痘瘡瘢痕状〕,10歳前後に寛解.まれ.

 

 〔診断〕①赤血球螢光〔400nm〕②血漿赤血球・糞便のプロトポルフィリン(pp)増加,③肝機能障害.

 

 〔病因〕常染色体優性遺伝.骨髄の赤芽球のferrochelastase (heme synthetase)活性低下によりPPからhemeへの鉄のキレートが障害され,PPの過剰化を生じ,これが赤血球・皮膚・肝に蓄積して種々の症状を惹起する.この酵素活性の低下は肝細胞で見られることがある(erythrohepatic protoporphyria Scholnick 1971).また過剰PPにより肝細胞障害・毛細胆管閉塞を生じ肝障害が発生する.

 

 〔組織所見〕真皮乳頭,血管周囲性ヒアリン沈着〔プロトポルフィリン分解物質と血管周囲組織成分との結合〕.

 

 〔治療〕①遮光〔400nm付近〕,②高β-カロチン食,③洗浄赤血球輸血・交換輸血,

 

④鉄剤・ヘマチン投与,⑤利肝剤.

 

03.晩発性皮膚ポルフィリン症porphyria cutanea tarda (PCT)

 

 〔症状〕中年以降の男子で,長年飲酒にふけっていた者に多い.

 

 1)皮膚症状:春夏裸露部に,しばしば外傷につづいて水疱を形成.軽度瘢痕・萎縮・稗粒腫・強皮症様硬化・色素沈着をもって消退し,反復.顔面に多毛症.

 

 2) AIPのように腹部症状を伴うことあり.

 

 3)赤血尿.

 

 〔病因〕アルコール長期摂取・薬剤〔砒素・ヘキサクロロペンゼン中毒〕による肝障害があり,尿中ウロポルフィリンⅢ・コプロポルフィリンⅢ,糞中コプロポルフィリン・プロトポルフィリン増量がある.このように原因の明らかなものを症候性PCTといい,一方遺伝〔優性〕があり, AIPに近い型〔≒異型ポルフィリン症(p.variegata) (VP):糞中プロトポルフィリン陽性Jもある.

 

 〔組織所見〕表皮下水疱,血管周囲性PAS陽性物質.

 

 〔予後〕肝病変に左右される.

 

 〔治療〕禁酒・遮光・重曹内服〔1囗4~5g〕・瀉血〔2,3週に300~500m1〕・肝庇護療法.

 

4.急性間歇性ポルフィリン症acute intermittent porphyria (AIP)

 

 優性遺伝で女子に多い.急性腹症〔腹痛・下痢・嘔吐:腸筋けいれんによる〕,神経症状〔筋無力症・麻痺・呼吸麻痺〕,精神症状〔不安・刺激性・幻視・廿ん妄・てんかん様発作〕など重篤であるが,皮膚症状は色素沈着のみで光線過敏症はない.呼吸麻痺のため死亡率が高い.尿中ポ量は低く, ALA・PBGが増量する.ALAS活性上昇.バルビツール・スルフォンアミドで誘発されることがあるので,その投与を禁止する.発熱・月経周期・妊娠も発症に関与する.尿は長期放置すると褐色となる.急性期にはステロイド・EDTA投与,気管切開など.

 

 遺伝性コプロポルフィリン症hereditary coproporphyria : 常染色体性優性遺伝で.女子に多く思春期以後に発症AIPに近いが薬剤誘発性はない.